本日、愛猫が永眠した。

名前はチョロ。雌猫。

 

約10年程前。友人とその親とで同じお家で生まれた(父猫は一緒で母猫違い)猫をそれぞれ2匹ずつ飼っていた。父猫はソマリ。母猫は雑種。

うまい具合にアビシニアンそっくりの子猫達だった。

 

友人の母親宅はペット禁止のアパートで、飼えなくなったという事で我が家で引き取る事になった。本当は子猫が良かったんだけどw

 

ツレには反対されたが、その反対を押し切って1匹だけ飼う事になったが、ともかく友人の母親宅から猫を引き上げなければいけない。

友人宅もペット禁止だったので、これ以上は引き取れなかった事と、丁度その頃海外旅行で長期家を開けるという事もあって、一時的に我が家に2匹ともやってくる事になった。

 

「チョロ」という名前は初めから決めていた。

ともかく、チョロチョロと元気な子猫を飼いたいと思っていたから。

友人からは出来れば2匹とも引き取って欲しいが、ダメだったら気に入った方だけでもと言われていたので、友人の旅行中にどちらか1匹に決めれば良かった。

ともかく、「チョロ」の名前にふさわしい方を引き取ろうと思っていた。

 

初日は大変だった。来てすぐタンスの裏に逃げ込む2匹。全く出てこない。

夜中はコタツを占拠され、家族が夜中に電話しようとコタツに足を入れた途端、シャーッシャーッっとヘビの威嚇音のような声を上げられ、2匹どころか1匹飼うのも考えてしまうほどだった。

翌朝から突然態度は豹変し、ご飯催促で寄り添ってくる姿を見て、結局猫を飼うという事は決定となったのだが。

 

「チョロ」となるべき子猫は比較的直に決まった。その猫は赤い首輪を付けていて、前の飼い主には「あかちゃん」と呼ばれていたとのこと。もう一匹は黄色の首輪を付けていて、「きぃちゃん」と呼ばれていたので、仮の名前だしと音の近い「クッキー」という名前を付けた。

結局どちらか1匹を返す当日、もうツレは両方飼うものだと覚悟を決めていたようで、そのまま引き取る事になった。

 

チョロは昔からあまり体が丈夫な子ではなく、来て直に体調を崩して、ガリガリに痩せた事があった。

「この子は内臓が弱いから、あまり長くは生きられないかも」と医者にも言われたことがあって、長生きできないのならせめて美味しいものをと食べさせたら、プックリと太ってだいぶ丈夫になってくれた。

 

チョロは、私が病気で寝込んでいると心配そうに付いていてくれたりする優しい猫だった。

でも、朝方お腹が空くと、高い所から私のお腹目掛けてダイビングする乱暴な猫でもあったが。

トイレに行く時は必ず一緒に入ってくるし、私の入浴後のお風呂に入ってきてお風呂の床のお湯を飲むのが好きなヘンタイ猫でもあった ^^;

 

今年の7月。

ふと抱いた時にお腹を見て、うっすら黄色くなっている事に気がついた。

(チョロは去勢手術をして以来、お腹が禿げたので地肌の色が丸見えだ)

その前からなんだか少し痩せてきて、エサを変えたから食べなくなったんだと思っていたのだけど、なんとなく気になって病院に連れて行った。

 

検査の結果は、肝臓の機能不全。

黄色くなっていたのは黄疸症状で、思ったよりも重症だった。

その日から点滴と投薬が始まった。点滴も週2回程度から毎日に増え、投薬も1日3種類くらいから始まって、1日7種類くらいまで増えた。

点滴は毎日といっても病院の休診日もあるため、とうとう自宅で皮下点滴(首の後ろの辺りに刺す)をすることにもなった。

もちろん夏休みの旅行等も出来ない。必ず誰かは家にいなければいけない。

 

見た目はそれ程状態が悪くなさそうに見えたのに、病気は確実に進行していった。

症状は抑えられても治る訳ではなく、肝臓の機能不全から肝硬変に症状が変わってしまった。その頃には時々食事を受け付けなくなる日があったり、吐いてどうしようもない日もあったり、薬で食欲増進させたり、吐き気を抑えたりそうやって日々を過ごしていた。

 

一時期黄疸もだいぶ薄くなり、もしかしたら回復しているのか?と思った頃、血液検査やエコー検査をして、肝硬変が手術出来ない箇所に出来ている事、数値が振りきれる程、症状が悪いことが分かった。

病院の先生からは、この数値でこの状態は奇跡ですとまで言われた。

 

ある日のこと、病院の先生から、自宅での点滴の効果が期待する程出ていないので、血管に直接点滴を入れる方法を薦められた。

この方法の場合、片手にカテーテルを挿入し、それを抜かないように首にエリザベスカラーをつけると言われ、私達は躊躇した。

カテーテルを何週間も挿入し続ける事は人間でも嫌なものだし、加えてエリザベスカラーまで付けられるとなると、そのストレスはどれ程のものか?

症状が回復するという事であればその方法を試してみるという手もあるが、回復する事はない。と言われているのに、いたずらにストレスを与えて延命だけをさせる事になるのではないのか?

それはチョロにとって良いことなのか?

 

何度もツレと話し合うも結果が出ないままに12月になった。

12月に入って、急激にチョロの体調は悪化した。

グッタリする事が多くなり、トイレまでも間に合わないらしく、移動中の階段でのお漏らしが増えてきた。

今年の1月の予防接種時点で5.4kg有った体重が、7月時点では4.5kg。

12月の時点では3kg代まで落ち込んでいた。

 

もう悩んでいる時間はなくなった。

少なくとも今の具合悪さが少しでも改善出来るならと、血管点滴を始める事にした。私が毎朝病院に置いて来て、家族が夜7時くらいに迎えに行く。

病院の開始時間に合わせて連れて行くと、毎日会社の始業時間には間に合わないのだが、上司の理解と応援が有って可能となった。

 

そして血管点滴を始めて3日目。昨日の事だ。

症状は改善しなかった。結局腎不全もまで引き起こし、全身に毒素が回っていたのだそうだ。全身という事は頭にまでその影響は有って、歩く事もまともに出来なくなった。歩いている途中で倒れるのだ。

ケイレンが出て、グッタリしているかと思うと、幻覚に向かって飛び掛る。

目が放せない状態となり、昨夜は朝方まで、30分ずつ交代で休憩を取りかならず誰かがついている事にした。

朝4時過ぎまでこの状態だったが、何とか1晩持ちこたえ、2-3時間はベットで眠ることにした。

いつまでこの状態が続くか分からなかったし、先に私達が潰れる訳にはいかないと思ったから。

 

今日も朝病院に寄ってチョロを置いてきた。

キャリーバックの中でやたらと暴れて居て、キャリーバック毎病院に預けた後も、モゾモゾとバックの中で動いていた感覚がしばらく脇腹に残った。

 

ランチタイム。

年末ということも有り、部署のメンバーで忘年会ランチをする事になっていた。

料理の注文を終えた頃、病院から電話がかかってきた。

「急変です。すぐ帰れますか?」

たまたまその日はミーティングがいくつか入っていたが、偶然どれもそのランチメンバーが関わっていたし、上司も一緒だったので、ミーティングのスケジュール調整は全て彼らが引き受けてくれて、すぐに帰る事が出来た。

ツレにも連絡し、会社が私よりも近いので早めに行ってくれる事になった。

ツレの方も上司に話したところ、「命の事だから行きなさい」と言ってくれたのだそうだ。

 

駅に急ぐ途中、「あとどれくらいかかりますか?」と再度病院から電話が。

「早くても40分かかります」「なんとか急げませんか?」

ともかく帰って来いしか前の電話では言わなかったので、状況が分からない。

「どんな状態なんですか?」「呼吸が止まって、今人工呼吸器を使っています。

40分もかかったら心臓が止まってしまいます」

・・・ともかく、私は無理でも誰かが看取れればと祈った。

 

丁度早く到着する電車が出てしまったばかりで、40分では到着できない事が確実となって絶望的な気分になった。

それでも少しでも早く到着出来る電車に乗った時、また病院から電話が有った。

「呼吸も止まって一度心臓も止まりましたが、自立呼吸を始めて心臓もまた動き出しましたので、慌てなくても大丈夫ですよ」

チョロが私達を待ってくれているのだと、がんばってくれているのだと思った。

 

どうにか病院に到着した時、チョロは生きていた。

目が見開いて(意識が無いので目が閉じられないのだそうだ)、手足が常に動いている。まるで歩いている様な仕草だった。

もう周りが認識出来なくなっているとは言われたが、ともかく生きて待っていてくれた事に感謝した。

 

いつまでこの状態か分からない。一晩中点滴で付きっ切りとなる可能性もある。

一度家に戻って、休んでおいてください。

先生にそういわれて家に帰った。

私は昼食を済ませていなかったので、途中でお弁当を買って食べ終わったその時、電話が鳴った。

チョロの急変を告げる電話だった。

 

急いで病院に行ったけれど、もうチョロの魂はそこには無かった。

空っぽになった体だけが横たわり、人工呼吸器で胸が上下しているのみ。

チョロは逝ってしまった。

 

7月の時点で、もう治らないと言われた時から覚悟はしていたけれど、後から後から涙は止まらず。もうあのかわいい声や仕草が見れない事を思うと悲しくて悲しくて仕方が無かった・・・

でも、もうチョロは苦しまなくて済むんだと思うと、正直ホッとした。

 

041204_2039~01

チョロに血管点滴をする事を躊躇したこと。

それが飼い主のエゴになるのか、チョロの為に良かった事なのか分からない。

もし時間を戻せたとしても、やはり同じ事を繰り返したことだろう。

そもそも点滴や投薬をした時点から、飼い主のエゴだったのかもしれない。

でも、愛すべきチョロは幸せだったと思うし、幸せであったと思いたい。

チョロの顔は、本当に驚くほど安らかだった。

 

ちょろりん、長いことよくがんばったね。お疲れさまでした・・・